入ると、中は真っ暗であった。阿部をしんがりに、三橋は歩こうとして、止める。空中にプログラムを広げ、ざっと走らせると、三橋の目の前に赤い矢印がぷかりと浮かぶ。 「何だこれ、三橋。」 「め、迷路よ うの、ひっかから、ないように!」 いつこの中の把握をしたのか誰も分からない。ウイルスとファイアウォールで頭がぱんぱんだった時でも、三橋は次の手を打っていたようだ。その証拠かどうかは分からないが、全員に軽い負荷がかかり、三橋の頭の右側に何か分からないプログラムが走っている。 「とりあえず矢印通りに?」 泉の質問に三橋は「黄色になったら未知のトラップがあるから待って」との事。 「田島、お前なら平気だろ。先頭を行け。泉はしんがりに。オレは三橋の真横に。」 「…そのココロは?」 泉の問いに阿部はしっかりと「頭脳が潰されたら危険だからだ。」と返す。 「水谷、そっちは?」 田島がインカムで呼び掛ける。返事は浜田から。 『ホーム側のウイルスはオレらで対処できるまで減ったぞ!』 「水谷!来い!」 三橋の背中に付いている一番細いゴムをぐい、と引っ張る泉。 「分かったから引っ張らないで!」ときゃんきゃん騒ぎながら、水谷移動。見る間にゴムが太くなっていき… 「うわっとぉ!」 三橋の隣でべちゃっとストップをかけた。転倒ともいうが、自分たちよりも先に行くのは危険な為、潰れたカエルのような水谷の姿に誰も笑う事はなかった。 水谷はよいやっせ、と立ち上がりながら、阿部と泉から簡単な説明を受ける。 「じゃあ、オレは阿部の反対側の横を守る。」 しっかりとした返事にその間にポイント稼ごうとしていた阿部を除き、おう!と応える。 「田島!始めろ!」 泉の言葉に頷き、田島は矢印の動く方向へと歩き出す。阿部は三橋の右側を、水谷た左側を。泉は背後にも気を配り、進み出す。 三橋は何をしているか分からないが、田島の背後を追っている。 沈黙の中、5人は攻略を始めたのであった。 かれこれ20分ほど進んだろうか。花井から『なにうろうろしてるんだ?』と心配が具現化された声で言われた。 「今、田島と阿部がトラップ解除…できた!」 水谷がわっと喜ぶ。三橋は集中しているようで、目の前、左右、額の所にそれぞれプログラムを走らせている。自分たちにも負荷はかかっているが、三橋の足元にも及ばないだろう。 さて進むぞ。という時に得てしてそういう事が起きる。 全員を襲う恐ろしい程の負荷。用意していた容量どころか根こそぎ奪われる感覚… 「み、三橋!」 泉が叫ぶ。三橋はしゃがみこみ、半分近く処理落ちしていた。 泉が抱き込み、走らせているプログラムを見てぎょっとする。 「ハッキング…?」 脳の中にハッキングなんて出来るのか?と疑問に思うが、三橋の苦悶に満ちた表情を見て怒鳴る。 「一つプログラムをよこせ!」 首を横に振る三橋にここまできても強情が!と怒りが爆発… 「泉!阿部!水谷!データこっちに一つ回した!早くカウンターアタック!」 「三橋の処理落ちを支えてる!画面をこっちによこせ!」 泉の目の前に精密なプログラムが現れる。それに被さるように第三者のプログラムが流されている… 「田島!どうやった!」 「三橋の頭に手ェ突っ込んで剥ぎ取った!」 常人の出来る事ではない。こいつも天才だ! 『阿部たち!こっちも!』 西広から入る。田島は処理落ちしている三橋の視線を確認してプログラムを流す。ふっ、と三橋から田島の目の前にプログラムが出現する。 「浜田!受け入れられっか?」 『2秒後に受信する!』 「よーし!行け!」 田島に付いていたゴムにプログラムを乗せ、ぶん投げる! 『受け取った!』 「頼む!」 『任せろ!』 返ってきた声は栄口。 その時、上から三橋へ1本のケーブルが下ろされる。敵か?とその場にいた全員が身構えるが、『花井と部下一同』と書かれたそれにぽかーんとなる。 まだ残っている三橋の背中にケーブルが差し込まれると… 「花井、やりやがったな!」 阿部がにやりと笑う。 花井たちはどうやらフロア全員のパソコンの容量を三橋に流し込んだようだ。自分たちの負荷も軽くなり、三橋の処理落ちもストップした。 上からメモが降ってくるのを水谷がキャッチ。メモには一行。『出来る限りの事はする!頑張れ!』との事。インカムを使って知らせると全員がちょっとだけ笑顔になった。 泉が慎重に処理落ちしていた三橋から手を離す。見る間に構成されていく身体に全員がほっと… 「急げ!」 プログラムに |