水谷がペットボトルの茶を飲み干していた時。
『いただきまーす!』
二人の声が見事にハモって家の中に響きわたっていた。
今日の晩ご飯はカレーとサラダだ。特盛りご飯にごろごろ野菜。肉は今日は鶏肉。前回のカレーの時には牛肉だった。三橋なりになんかローテーションがあるのかも知れない。
「今日な、新しいヤツ来たの。」
「そうそう。それがまた楽しそうなヤツで。明日から楽しみだなぁ。」
「ついてこれるか?」
「ついてこなけりゃ阿部ン所っつーか、阿部の所がいいと思うぞ?…てか即刻阿部ン所。」
わいわいと三橋の前で会話がなされる。
「三橋、あのな、新しいヤツ入ったんだけどよ。」
「う ん。」
「そいつがまた情報屋とハッカー両立とかいう面倒なことしてたヤツでさ。」
田島と泉の情報収集もバカにはできない。水谷に関しては栄口に捕獲された時には既にほぼ全ての情報を把握していた。隠してやろうか、と思ったデータもあったが、それはそれで全て栄口たちが奪っていった。交渉の時のネタにするのだろう。アレはやられると痛い。
「家のパソコンの中、どっかからかっぱらってきたデータばかりばっか。それを上手く繋げて利用してたみたいでさ。」
「まぁ、それが原因でレフト方向に暴走するなんてことするんだけどな。」
「違いない。」
言って二人で笑いあう。三橋もそれにつられてウヒと笑う。
「そーいや、ここんとこずっと浜田がいたけど。」
泉がきょろきょろと部屋の中を見る…といってもそんなに広くないので人がいても犬がいてもネズミがいてもすぐに分かる。
「ハマ ちゃん は、用事 だって。」
三橋はその用事の内容も知っている(目が少し泳いでいる)ようだが、あえてそこにはつっこまないことにした。
「なー、三橋。」
カチャ、と田島がスプーンを置く。山盛りカレーはすでに消えている。
「う?」
三橋も最後の一口をもぐもぐと食べている。
「三橋もパソコンできるクチだろ?オレらの会社に来ればいいのに。」
「む、ムリ だ よ!」
「田島、もう何度もこの話しはしたんだからやめとけ。三橋がつらいだろ。」
泉が助け船を出す。
「そだな。悪ぃ、三橋。」
「う うん。田島くん は、悪く ない よっ!」
三橋もいつものように言う。これで話はおしまい。
「今度また、三橋のパソコン見せてくれなー。」
「い、いい よ。」
二人で食べた食器の片づけを始める。作ってくれた三橋へのほんのお礼だ。
「ウイルスとかワームとかあったら、すぐに言えよー。」
「それはすぐ駆除しにいくぜ?」
がっしゃがっしゃわっしゃわっしゃふきふきがちゃがちゃと片づける。
「それじゃあおやすみ!また明日な!」
「おやすみな!ゆっくり休めよ!」
「う ん!田島くん も、泉くん も、おやすみ!」
三人で言い合い、そしてドアが閉められる。
「ワーム や ウイルス ……」
三橋はぽつりと呟く。
「どっち も 大変 だ。」
なにがどっちなのかは誰もいなかったので、三橋の言っている意味は分からなかった………。