「おい!ここのデータの解析すんでんのか?」
「騒ぐな阿部!まだ検証中。」
「三橋!慌てなくていいぞ!脳に異常が出始めるタイムだ!」
阿部と泉の怒鳴り声、田島が三橋の前に作ったキーボード無しで入力できるアプリを導入してから異様に静かであるが、騒がない田島もまた少し気持ち悪い。
「ウイルス感染。5763人確認。」
栄口が青ざめた顔で報告。マジかよ!うわぁとかの声があがる。しかしキーボード等を叩く音の変化はない。今や最前線の基地となった三橋のルームは人でぱんぱんであった。
電話も見事改造され、集音マイクと5分に一度静止画が送れるようになった。相手の花井の状況も5分に一度静止画で入ってくる。回線が遅いので、動画には手が回らなかったと悔しがる巣山に手伝った沖がどうどうと宥める。
「西広!電話はいいからオレたちのバックについてくれ!情報が錯綜し過ぎて拾えきれない!」
栄口の要請を受け、西広が移動。
「情報に関しては『きょうへいの部屋』が冷静に判断を下し…三橋!メール!」
「だ、だれか…?」
「秋丸とかいう人。」
手紙型をしているメールは暗号化されている証。三橋は受けとると手紙を宙に放り投げ、右手の人差し指で投げて落ちてくるメールに真横に一本、線をひいく。メールはすぐに展開され、ぴっ、とディスプレイに貼り付けられる。
その文を読んだ三橋はふひっと小さく笑うと、ぱーっと返信及び添付ファイルをつけ、ぱっと投げる。瞬時に消えたそれを見て、もう何があっても驚かないと決意していた仲間たちでもやはり驚く。
「秋丸さん、は、きょうへいの部屋の、管理人!」
三橋の知り合いという説明に、類友?と首をかしげる面々がいた。
秋丸のメール内容は簡潔&シンプルで、浜田が潜るからワクチンの提供と自分のぶんのワクチンの確保であった。恐らく…いや、確実に後者優先だろ。とそこにいた者たちは思ったので、見ざる聴かざるモードに入った。と、三橋のホームに転送を知らせるアプリが立ち上がった。すわ、何者と思ったが、転送されてきた人を見て、田島と泉は思わず笑い、三橋は喜びで目が潤み、その他は呆然としたのだ。
超お手軽。
「手乗り浜田ー!」
田島が指さして笑っている。泉もぷくくと笑う。
浜田の大きさ、30センチメートル。
「仕方ねーだろ!処理の関係でこのくらいじゃないと処理落ちす…いや、三橋の事は責めてないから。」
最後のくだりは三橋に向けたものであった。半泣きモードに突入する寸前だったのだ。
「簡易モードで秋丸さんとこから来た。死亡者はまだでてない。あちこちで行動不能になって倒れてるのがいる」と浜田は語る。ワクチンをわけてきたから動けるかも。と続ける。
「は、ハマちゃ、ん。」
「おお。三橋。オレは無事だったよ。ちょっと雲隠れしたけどな。」
苦笑しながら浜田はウインクする。泉がキモッとヒく。
「お前の活躍は秋丸さんを通じてだいたい知ってる。…良く戻れたな。」
小さな手がすいすいと三橋の頭を撫でる。それだけで涙が出そうになる。
「三橋泣かすんじゃねーよ!」と早速田島が食い付いたが、栄口がどうどうと宥める。
「浜田もゴーグル使えたのか?」
「オレのは三橋特製簡易版。ただネットに潜れる程度の性能しかない。」
「え?なにそれ!」と水谷が驚く。バーチャルネットゴーグルは発売されているのは一種類のみ。
「…れ、廉価、版!」
浜田の説明を受け、浜田にゴミやら何やらが飛んでくる。全員の嫉妬を一身に浴びながら浜田は苦笑する。
「三橋!オレらにも使えるんか?」
田島ががくがくと三橋を揺すり尋ねる。
「た 田島くん、は、普通の…」
「あ、そか。使えないヤツ用だもんな!ワリ!」
田島は尋ねておいてあっけらかんと三橋を解放した。阿部も三橋に説明を求めようとしたが、泉が説明した。
「三橋のホーム設置にはオレも手を貸したからな。維持は任せろ!」と浜田は言った。
「あっちが攻撃してるなら、一番反撃もしやすいだろ?」
浜田のニヤリ笑いは更に凶悪になり阿部に伝染する。
「三橋、あそこの壁は全部解析済みか?」
「き、98パーセント…くらぃ…です…」
「泉、田島、栄口、水谷!」
「りょーかーい」
「腕が鳴るぜ!」
「オレも?」
「さらに被せてオレも?」
「言うだろう?『枯れ木も山の賑わい』って。」
4人から再度ゴミが、今度は阿部に雨あられとなってふりかかったのだった。