みふぁんたじー(仮)


 我らがニシウラ国の王、モモエが近隣の国であるミホシ国と戦闘し、それに勝った。死者は最小限、功績は最大限に。をモットーにしているモモエは、ミホシ国の領土である、ある都市を領主も含めまるっと頂戴した。

 まぁ、そこから話は始まるのだが…ちょっと説明も入れていこう。


 このニシウラ国は王位は世襲性ではなく、選ばれた何人かの候補生の中から選ばれる事になっている。
 今回は9人。歴代の王でもこれだけ揃えるのは珍しく、彼らが選ばれる20歳になるまで賭けの対象になっていた。王制になるのか、共和制になるのかも賭けになっている。のどかな人々であるが、いざ戦いになると勇猛果敢に戦う者たちでもあった。
 実は王制になるのか、共和制になるのか、という賭けには理由がある。
 モモエは仲の良い9人を非常に気に入っていたのだ。誰が王になるのか分からない。本当に誰が王になっても良いくらいの候補生たちなのだ。国民たちも彼らを気にいっており、道をあるけば両手がふさがるほどの荷物を持たされ、女子から熱い視線を。男からも…たまに熱い視線を浴びる。そんな9人。
「モモエ様、ミハシ様がお見えでございます。」
「分かったわ。すぐに通して。」
「かしこまりました。」と側近のシノオカが礼をとると、王の間に一人の少女が入ってきた。小動物のようにびくびくしながら、入ってくる姿に、苦笑を浮かべた後、顔を引き締めた。
「み…ミハシの領主、ミホシ国末のひ…姫、ミハシ レンででご、ざいま、す。」
 きちんと正式な礼をとる、薄紅色のドレスを着た少女は、先ほど言った戦利品の領土を治める領主である。
「お、お初におめ、お目にかかる事を、幸いと…」
「いいわよ。落ち着いて。」
 モモエは苦笑すると、ミハシに頼んでおいた事を告げる。びくびくしながらお付きの者たちが運んで来たのは書類の山。
 モモエの部下が受け取り、モモエに手渡すと、嬉しそうな顔になった。
「この報告書で色々できるわ!あ、ミハシさん?」
「ひゃっ!ひゃい!」
 飛び上がって驚くミハシにモモエは苦笑しながら「あなたには婚約者っている?」とのたもーた。
「い、いえ。いま、せん。」
「なら更によし!ミハシさん。将来有望株の年齢も同じくらいの国王候補を送るから、彼らにこの報告書の指示させちゃいなさい!あ、いい相手見 つけたら結婚も了承します。…というか、しなさい。はい、国王命令。」
 国王の謁見の間から小動物の悲鳴を思わせる声が響き渡った。



「何かオレたち、どっかで修行するみたいだよ。」とは情報通のミズタニの言葉。
「食い物うまければどこでもいーよ」
「タジマに同じく。」
 謁見の間のすぐ側にある控えの間では少年と青年の中間であろう年代の者たちが9人集まっていた。
 女は3人いれば姦しいが、男性も8人いるとそれなりにやかましい。
「今謁見してんのって、この間の?」
 坊主頭が近くにいた、座って紅茶を飲んでいる者に問いかける。
「うん。この間うちの領土になった都市の領主がやってきてる。」
「ニシヒロ、男?女?」
「女性って聞いてる…」
 周囲はざわりとなる。
「モモカン、いきなりオレたち並ばせて『さあ、結婚相手を選びなさい!』とか言いそうで怖い。」
 ニシヒロの隣でこれまた紅茶を飲んでいたオキがぶるりと身を震わせる。
「モモカンもそこまでキツいのはしないだろうが…」
 窓際に立っていたアベが呟く。坊主頭…ハナイも頷く。
「このくらいの情報しか集まらないって事は…」
「…まーたモモカン、悪い事考えてるんだろうな。」
 サカエグチとスヤマがうーんと頭を抱える。サカエグチはさっきから腹痛いとさかんにトイレへ行っている。
「メシ…」
「お前はメシの事しか考えてねーんだな!」
「るっせ!さっきイズミも同意したろ!」
 一番歳が若いタジマがイズミにブーイングをあびせるが、そよ風とも思ってないイズミは無視。
「美味いメシと水がありゃあオレはどこでも行くよ。」
 ハナイの言葉に違いない。と全員が笑った。




「ど、どう、しよう。シュウちゃん…」
「レンレン、泣かないの。化粧が落ちちゃうでしょ?」
 その頃のもう一つの控えの間では半泣きの声とお付きの二人が懸命に王女を宥めていた。
「そりゃ、国王の娘に産まれたからには仕方ない…って泣くなー!」
「カノウ…殺す!」
 侍女のミハシの遠縁にあたるルリから必殺の蹴りが繰り出され…
「だ、ダメだ よ!」
 寸でのところで止まった。
「確かにここで大きな音はたてられないわね。仕方ないわ。食事当番10回で許すわ。」
「え、それは…って、レン!お前の瞳もキラキラか…」
 カノウ シュウゴが深い深いため息を漏らす。
 ミハシ ルリは勝ったと胸をはる。
 ミハシ レン嬢は小さくウヒと笑う。
 その時、重厚なドアがノッカーによって鳴らされる。
「無理なら断ってもいいんだから!」
「国王に掛け合うぞ!いくらでも!」
「う ん。」
 ミハシはいつもは着ない豪奢な作りのドレスをよいしょと両手で支えながら控えの間から出ていった。
 再度閉められたドアを見ながらルリはぽつりとつぶやく。
「レンレンに不釣り合いな男なら…」
「男なら?」
 ルリは拳をぎゅっと握りしめ、空中にびしぃっと蹴りをしながら「潰す。」と一言。
 カノウは自分の股間をそっと両手で隠しながらドン引きしつつ半歩下がった。




 ミハシが再度謁見の間に行くと、全く面識のない若い男性が9名、正装して佇んでいた。
「ミハシさん。この9名が結婚相手候補ね!」
 ミハシも、男性9名も今知ったと驚いた。が、ミハシは勇気全部絞りきって、ドレスの端をつまみ、頭を下げた。
「せ、先日ニシウラ国領地となり…なりました、貿易都市ミハシの領主、且つミホシ国の皇女、ミハシ レンでご、ございます。」
「ハナイくん!先に自己紹介させてどうするの!ミハシさん。ありがとう。」
 一番端にいたハナイと呼ばれた丸坊主姿が慌てて一歩踏み出し、形式に乗っ取り礼をとる。
「ハナイ アズサでございます。」
 ミハシも礼を返すとアベ、ミズタニ、タジマ、イズミ、サカエグチ、スヤマ、オキ、ニシヒロがそれぞれ礼をとった。
 両方の自己紹介が終わったところで、モモエがやはりこの中から婚約者を選ぶ事と、ミハシには嬉しいのか不安になるのか分からない言葉を放つ。
「ミハシで起きている問題は彼らが全て、3年の間に解決します。ミハシさんも気楽になってね!」
「は…い。」
 ミハシは最上級の礼をとると、モモエの下がってよしの言葉を受け、謁見の間から退出した。


 ミハシがいなくなると、9人の男たちはモモエに詰め寄った。
「どういう事なんですか?」とアベ。
「3年も都市ミハシにいなきゃなんないんですか?」とミズタニ。
「宿題って…」とニシヒロとオキ。
「メシ美味いんかな?」
「あんなヒラヒラしたドレス着れるくらいには都市が栄えているって事じゃねーの?」とタジマとイズミ。なお、サカエグチはトイレへとダッシュ。スヤマはどう付き合えば良いのか自問自答中。
「分かったわ。サカエグチくんが戻ったら説明しましょう!」

 全員が走り去ったサカエグチが早く帰ってこいとの呪いの念を込めた。




 サカエグチが戻ると、8人からそれぞれどす黒いオーラが漂い、少しヒイたが、仕方ないとモモカンの前に近づく。
 謁見の間には今、彼らだけしかいない。モモカンが強いのと、候補生がまた強い事が分かっているからだ。
「えーと、どこから話せばいいかしらね…」
「出来れば最初から。」
 アベの一言に頷き、モモカンは話し出す。

 前からミホシとの国境側での紛争があった。今回の大きな戦闘であちらにかなりの打撃を与えた。金品よりも優先して頂戴したのは…
「正式名称自由貿易都市ミハシ。」
 ああ!とほとんどの者が聞いて驚く。良くもまあ、ミホシ国王が手放し…よほどえげつない交渉があった事は想像しやすい。
「領主のミハシ レンはあの年齢で小さいけど都市全てを切り盛りしています。」
 ひゅっとアベが息を飲んだ。
「ていうことで、修行ということであなたたち、3年ほど行ってらっしゃい。」

 はあ?と全員の顔に表情が出た。

「出来れば…というより必ずレン嬢も嫁として連れて帰る事!」

 へあ?という表情に変わる。全くもってモモカンが言っている事が分からない。

「ち、ちょっと待って下さい。何故…結婚?」
「簡単な事よ。レン嬢は国内の一部分から鬱陶しいとあの都市の領主になったけど、もとは現国王の大事な孫娘。戦闘を気にしなくても良くなる。…うちの国はまだまだ新興国で小さいんだから!良くあの戦闘で勝てたと思うくらいよ!」
 言ってモモカンは立ち上がる。
「明日にはレン嬢も帰るから、それについて行きなさい。あたしの話は以上!」
 カラーンと鐘の音が響きわたる。シノオカが鳴らしたそれは、王との謁見が終了した合図である。
 候補生たちは慌て自室に戻るのであった。

「もう7日……大丈夫 か な?」
「まぁ、オダを残してきたから平気だろ?」
「だと いい けど な……」
 心配性のレン嬢はまだドレスから普通の服へと着替える事なく、うろうろと心配そうに豪奢な佇まいの貴賓室を歩きまわっていた。
「レンレン!あんまりうろうろしないの!本当にもう!レンレンの領土をニシウラが引き受けて何が起きるのか……」
「あ あまり 変わらない と思う!」
 それには結構しっかりとした口調でレン嬢が答える。
「税制も変わらない。兵士とかが変わるだけか…?」
「基本的に は そう!」
 レンはふと考えるしぐさをする。こういうときに話しかけてはいけない。大切な考え事の邪魔をすると都市が機能しなくなる事もありえるのだ。
 この城から都市までは馬車で3日。全員が無事で帰ってきてと泣きながら別れた事を思い出し、レン嬢は涙ぐみそうになる。いけないいけない。とぷるぷる顔を振って、考える。今は4月。豊穣を祈る為の祭の前には戻り、警備とかの整理をしないといけない。
「オレ が しっかりしない と!」
「そう!それでこそレンレン!」
 ルリの言葉にむぅ、と顔をしかめたレン嬢は一言だけ
「レンレン て ゆーな。」と言った。



 一方、野郎どもは大騒ぎになっていた。明日出発?馬はある。食糧、水、自分の最低限の服、アイテム、まとめるだけで3日はかかる!
「おーい!タジマが全員の食糧と水を持ってやっから服とかかさばるモンを持ってくれって!」
 イズミがハナイの部屋にやってくる。
「ああ、それは良い手だ。全員集まって役割分担を決めるか。」
「そうだな。ハナイの部屋に全員集まるようにしたから。」
「はやっ!」
 言っている間にも次々と集まってくる。
「食糧と水だけは重すぎる。水は俺にまわせ。」とアベが早速指示をとばす。
「かさばるモノの結構な量はオレの馬にまわせるよ。」とオキとニシヒロが手をあげる。
「自分のモノは自分で持つことにして…夜とかの準備はどうすんだ?」
 スヤマの言葉に全員が考える。
「オレとイズミ、出来るよな?」
「お、おお。」
 夜営場所の設置やら何やらは、この国にくるまでは旅商人をしていた二人が頷き合う。
「その荷物の重さは?」
「馬1頭!」
「よし。モモカンと交渉して馬をあと5頭借りる事にしよう。どうしても色々とかかる。」
 いつの間にやら仕切っているアベ。気づいたらサカエグチはトイレへと消えている。
「あちらは女性だ。何かあったら護るくらいの気遣いは…」
「逆に襲う…ぎゃん!」
 アベの言葉を茶化したミズタニが裏拳をくらってタジマへとふらついてくる。
「夜盗とかはこの街道はでないからな〜。心配ないと思うぞ?」
 どんと突き返してタジマは告げる。ミズタニは今度はハナイのほうへ。
「そんなに大きな街道が走って…るな……確かに。」
 ミズタニをスヤマに押しやって考える。ミズタニの目はぐるぐるだ。
「そりゃそうだよ。自由貿易都市といったら栄えない所はない。ミハシはここいらで一番栄えている貿易都市だよ。」
 ニシヒロがミズタニ〜大丈夫〜?とかいいながら情報を与える。勉強はしていたが、そこまで栄えているとは誰も知らなかったのだ。
「この城へもミハシ経由のキャラバン隊列とか多いし…というかかなりあるし。」
 へー。と言って、ハナイに頭を小突かれるタジマ。いつもの事だ。
「おい。ここで言いあっている時間はねぇ。馬に詰み込む作業を始めないと、明日パジャマで出かける羽目になるぞ。」
 アベの言葉にあーいうーいと答えて、全員の馬に詰め込むモノを一覧にして、漸くトイレから戻ってきたサカエグチ含め全員がそれを紙に写して部屋へと戻る。今夜は寝る時間があるのだろうか?
「明日から楽しい事が起きるんだろうな!」
「そう能天気な所がタジマらしいよ。」
 オキに言われてそうか?と答えるタジマがいた。




 部屋で夕食をすませ、化粧を落とし、夜着に着替えたレン嬢は、そろそろ寝る時間帯なのになかなか寝付けないでいた。
「レンレン、興奮してるの?珍しい。」
「ねむれ ないよぉ…」
「仕方ないわね。一緒に寝てあげる。」
「あ ありが とう!」
 ちょっとカノウが羨ましそうな顔でルリたちを見たが、ルリは威嚇する目つきでそれを一蹴した。
 ルリの体温で落ち着いたのか、すぅっと寝入るレンを見て、髪を梳く。
「レンレンに結婚の話…か………。あの9人から一番いいの選ばなきゃね。」
「まぁな。泣かせたら…」
「泣かせたら?」
「斬る。」
「あら怖い。」
「握るお前のほうが怖いわ!」
「あらそう?」
 レンの寝顔を見ながら、カノウとルリはがしっと手を握り合った。いつも相反する意見で揉める二人だったが、レンの事だと一致団結した。今回もそうだ。

「結婚してもしなくても、あたしたちが最高のパートナーを見つける…!」
「激しく同意…!」



 こうしてミハシ レン皇女のニシウラ国最後の夜は更けていった。


 これから何が起きるのか?恋愛?バトル?それとも他のコト!?


 近日公開! ………なーんてね。なーんてね。