日曜日、電話で三橋が提案した場所はここらで一番大きなスポーツ用品専門店だった。
『え?三橋、陸上部に入るの?』
 言葉には少し落胆した声が混じる。だが、三橋は「ち ちがう よ!」と大きな声で否定した。
『え…じゃあ、も、もしかして…』
 ぃヤッターっという声は三橋が耳を30センチ以上離しても聞こえてくるものだった。
『なら、さ。泉も誘おうぜ。』
「い いずみ くん?…め…」
『迷惑じゃねぇって、こんなめでたいことに参加しないほうがバカ。』
 言い切る田島。田島言い切る。
『じゃあ、明日1時に…とそうだな…駅、集合!オレらは途中で合流してもいいけどな。』
「う うん!」
 半分流されるがままに話は決まってしまった。
 次の日は無論雨だが、誘いに二もなく承知した泉と田島と三橋の3人の顔は楽しげ…いや、すごく楽しい顔をしていた。
 靴がもうボロボロだったから買い換えようかなーとか言っていた泉に「んじゃオレも!」と田島ものっかり、3人同じメーカーの同じ靴を買った。サイズはまちまちだったが。で、練習着を買った。「新調する金、貰ったんだよ。」「なんだ、お前もか。」と二人の会話にウヒッと笑い、三橋は一緒になって買った。半袖は来年使うから、どれくらい背が高くなったか分からないからその時また買おう。3人で、と笑いあいながら買った。
 お腹すいたから、マックでハンバーガーとポテトとジュースを飲みながら、野球の話に花が咲いた。三橋も遠のいていたとはいえ、きちんと新聞とかテレビでチェックは入れていたようだ。話はトロいが、ちゃんと食いついてくる。
 ちょっと誤解とかあって、少し涙ぐむ時もあったけど、3人はまた駅で別れた。方向が一緒の三橋と田島は並んで歩く。三橋は色々な荷物があって、かさばってるね、といいつつも嬉しそうに話した。
「明日から着てくるんだぞ。」
「あ、で…でも…。」
「でも?」
「どこで着替えたらいい?」
「え、三橋のロッカー。」
 そのまんまだぜ。と田島が言った。手書きで書いたから汚いけど、しのーかに頼んでうまく書いてもらうかー。という言葉に、三橋は嬉しくて、涙を流した。
「明日一番で、泉と一緒にシガポの所に行って、入部届け、出そう。」
「…うん。」ぽろり。
「シガポ、部室のカギ持ってるから、それで開けて入って、着替えよう。」
「…うん。」ぽろり。
「そしたらモモカンに言おう。な。」
「……うん。」ぴたり。
「…だーいじょぶだって。甘夏つぶしたりすっけど、モモカンは怖いけど怖くないって。」
 どっちなんだろう?と三橋は考えたが、田島の考えにゆだねることにした。


 モモカンは、三橋を見るなり本当に驚いた顔をして、その後ニッコリと笑った。
「これから、よろしくね。」
 握手を求められた。相手は左手。ならこっちも左手…」
「いたたたたたたたたたた…」
「これくらいの根性ないと、来年の夏までもたないからね、その覚悟でね!」
 言って、三橋は少しの間、隠れているように指示された。隠れ場所は茂み。ちょこんと座って待っていたら………

 光が、見えた。まぶしい、朝の光。
 
 その光を一身に受けながら、モモカンの言葉に答えていった。