| 除虫屋・ニシウラ ニシウラの小旅行・5・前 |
歩いて10分もかからない場所にそれはあって、全員ウキウキといった状態でみなとみらいの街を闊歩する。まだ建設にも至っていない場所が所々あるのが、十年も経てばビルやらなにやらで一杯になってしまうのだろう。この街も成長期ということなのか?とちょっと巣山がオトナな思考を巡らしていても。
「おー!この甚平着て、このブレスレットみたいなのつけときゃ遊び放題なんだな!」
「そーみてーだな。」
なお、この中唯一の女性であるモモカンはエステとか予約しているらしい。全員に一時的に集合する時間を告げるとさっさと行ってしまった。
「女性、浴衣が選べるんだって…」
「どんなの選んだんだろうな…」
ひそひそと沖と西広が話している言葉が耳に入り、ちょっぴし耳が赤くなる花井。既に未成年トリオは先陣を切って脱衣所へと向かっている。
「あれ?阿部は?」
今まで手首につけるか足首につけるかと騒いでいた時、ふとよく剃られた頭をあげた花井がきょろきょろと見回す。
「アカスリのフルコースやるんだって。」
やはり苦労性。どうしても全員が気になってしまう。
答えてくれたのは、「なんでも来いやぁゴルァ」というようなオーラを垂れ流しているとこの頃思う栄口がしれっとそれに答える。
「阿部、毒素という毒素、全部落としたら何もなくなりそうだよね。」
にこっ☆
そ、そんな笑顔で言われても……
栄口の笑顔にドン引いた、花井、ついでに巻き込まれた不幸男、水谷。そしてとばっちり組の沖、巣山も顔を凍り付かせたのであった。
「うぉー!でっけー風呂!」
「前隠せよお前!」
「どーせついてんの一緒だろ?」
「デリカシーっつーのがあるだ……レン?」
やはり入り口で縮こまっているレンを見て、はぁ、と二人は同時に息をつく。
レンは海外の生活が長い…というか、生活が普通の日本人とはかなり異なるものである。
曰く、全く知らない多数の人を前に肌を見せた事がないのだ。
田島、泉、栄口、西広、花井まで入って日本式の温泉がどれだけいいものか。どれだけ気持ちのよいものか。1週間かけて、ホテルで待っていると言っていたレンを漸く頷かせたのだ。
レンは今、これからナニかをするような女性のようにバスタオルをきっちり巻いて、ちょっと伸びた髪はゴムで結わかれて入り口に突っ立っている。
「ほーれ、ここまで来て尻込みするなって。」
田島がぺいっとバスタオルを剥ぐと、泉にさっと投げよこす。泉もわかったようで、普通のタオルを田島に投げ渡す。
「こーやって、腰にまいときゃチンコみえねーだろ?」
うぅぅと俯いていたが、仕方がないとレンも腰にきゅっとタオルを巻く。
「湯船に入る時はタオルはとらないとマナー違反だからな!みんなに怒られるぞ!」
レンはちょっとだけホテルに戻ってぼーっとしていたくなった。
まだ尻込みしてるレンを真ん中に、田島と泉がてきぱきとレンのをも含む髪の毛と体を洗い、持つのはタオルのみ。
「まずはフツーの風呂!」
既に数人の子供から老人まで入浴している大きな浴槽の傍にまとめてタオルを置き、三橋の両腕をしっかりと掴んだまま、ゆっくりと入浴。程よい熱さの湯が見る間に体にしみこんでいく。
「かーっ、いい湯〜。」
田島がはぁぁぁぁぁぁと幸せの溜め息を吐きながらニカーッと笑う。泉もはぁ、と息をつき、田島に同意する。
「レンは?こんなでっかい風呂にみんなで入るの初めてだろ?」
これからニシウラの奴ら全員くるぞー。と言われたけど…
「う ん。」
頷く。ニシウラの風呂も足を投げ出して入れるほどの大きさだが、この大きさの比ではない。
「色々な風呂があっから、沢山回ろうなー♪」
小さく、こくん、とレンは頷いた。