祭りだよ!全員集合?
祭りは大騒ぎ


お祭り当日。
「はーい、全員着替える人は食堂に集合!」
 夕方になって、栄口が各人の部屋に言いに来た。
 早速、レンも買った浴衣と帯を持って、食堂へと急ぐ。

「お、レン来たー!」
「泉く ん。 田島 くん。」

 泉は紺色に赤い模様が入った甚平、田島は背中に竜の絵が入っている甚平を着て、既に到着していた。
「どーだ?かっこいーだろー!」
 うりうり、と見せつける田島に、レンがこの所出すようになったキラキラ目線を出してくる。
「か かっこ い い!」
「田島のはド派手だよなー。」
 泉は上から下までしげしげと見て田島の格好をチェック中。
「泉の地味だよなー。」
 田島も泉の格好をチェック。
「まぁ、楽だから何とも言わねぇけど。」
「まぁなー!」
 3分で着替えたぜ。と泉が言った。着替えにはちょっとトロいレンは驚きの視線。
「はいはい、そこまでそこまで。着替えるよー!」
 既に浴衣に着替え終わっている栄口と家から持ってきてあったという西広も既に着替え終わっている。巣山も途中までは着
替えている。水谷も着てきたけど「死装束!合わせ目逆!」と栄口からツッコミを受け、直している。よって着方を知らない
のは阿部、花井、沖、レンの4人であった。
「花井が着られないなんて驚きだな。」
 巣山がよっこらせ、と帯のしめ方を西広にききながら話しかけると「何年前が最後だったから忘れた」という返事が返され、さっそく「うわー、もうその歳で痴呆?」「花井も歳とったんだー」「ナムナム」という声があちらこちらから飛んでくる。「うっせぇ!」と花井が返している中、さっさと栄口はレンに近寄る。
「あっちはおいといて、レン、着替えよう。」
「う うん。」
 はい、まず脱いで。という栄口の言葉にレンがぎょっとする。
 口をぱくぱくしているレンに田島が入る。「うん。」「なるほど。」という言葉が途中に入っている所をみると、確実にレンの分からない日本語を理解しているらしい。英語は分からないくせして!さらに田島が言って、泉が普通の日本語へと変換。曰く「レンのいた場所では集団で肌を見せる習慣が全くなくて、恥ずかしい。」とのこと。
 「なんかレンって、外人みたいだなー。」という水谷の言葉にレンの目が潤む。すかさず飛んでくる泉の跳び蹴り。浴衣姿でなかったら、栄口が椅子でも投げていただろう。
「…お前、合わせ目逆だったほうが良かったんじゃねーか?」
「アイカワラズヒドスギマス。アベ。」
 がっつりつっぷしている水谷と阿部の会話をスルーして、栄口は「どうしようかな。」と言ってみる。で、ぽん、と手を鳴らす。
「泉、田島、巣山、玄関で下駄と雪駄の準備しておいて。」
「分かった」「あいよ!」「了解。」とそれぞれ言って、食堂から脱出。
「水谷、阿部に。西広、花井に着付けちゃって。」
 「げっ」「うん。」という返答を耳にして「これなら視線がこないからさっさと着替えたら平気だよ。」とにっこり栄口。

何か怖い。

「……う ん。」
 その怖さに負けて、レンは服に手をかけた。






「おー、レン、似合うよ!」
 最後まで口げんかしながら着付けていた水谷と阿部を残し、殆ど全員が玄関とアプローチ部分に出ていた。
「そ そう?」
 下駄を選択したので、いつもより少し背が高く感じる。
「最後に出てくるのは?どっち?一口100円!」
 急に泉が言い出す。キョドつくレンの隣で花井が「水谷に2口!」と手を挙げる。
「阿部に1口」巣山が手を挙げる。周囲から「おおー」とどよめき。
 その後、「水谷に1口!」コールが数回入り、レンはどっちにしよか、と考えて。
「あ、あべくん に ひと く ち?」
 最後疑問系の声をあげた1分後。

『水谷ィィィィィィィ!』

 とっても裏切る結果に終わった水谷が何故か玄関口で巣山とレン以外にボコられる。
「お前ら、また賭け事やってたのかよ。」と言いながら出てきた阿部に、栄口はぽん、と肩に手を置き言った。

「合わせ逆。死人の阿部くん。」

 ギン、と阿部が水谷を睨む。水谷をよく見ると合わせ目が直っている。
「オレが手伝うから。」と恐る恐る西広が手を挙げるまで今度は阿部が思う存分水谷をボコり。

 出発は10分、延ばされた。





 小さな神社、と言っても、ここら辺では一番大きな神社である。よって、出店がわんさかと出ている。
 人の多さにレンがはふはふ言っていると、「やられたー」と栄口の声。
「?」
 近くにいた沖に視線を合わせると苦笑しながら「水谷がまた誰か誘ってナンパに繰り出したんだろ」と答えてくれた。誘った相手が巣山と分かると全員がどよめく。
「巣山、漢だなぁ。」
「オレもそう思う。」
「同感。」
「…巣山が成功するか、どうする?」
 西広がぽそっと言った声は全員に伝播し。「成功にマックのバリューセット!」「失敗にビール5本!」「失敗に日本酒500ml!」「成功に泉、田島、レンには美味いモノ、他には秘蔵のエロDVD!」(田島から大ブーイング)………………

「失敗するに、1週間夕食後のデザートの優先権。」

 にっこり笑って言った栄口の笑い方に、全員が怒っているのがよーく分かり、
「いいか?レン。」
「栄口は絶対に怒らせるなよ?」
 泉と田島の形相にも驚きながらもレンはこくこくこくこくこくと頷くのであった。

「焼きそばー!」
 ばたばたばた、「おっちゃーん!2人前!」ぱくぱく。
「お好み焼きー!」
 ばたばたばた、「2枚。」ぱくぱく。
「焼きトウモロコシ…?」
 ぱたぱたぱた、「えっと…沖くん、西広くん も …5本。」ぱくぱく。
 その他、たこ焼き、イカ焼き、と食い道楽に走っているのは…泉、田島、レンの3人。お目付役で付いていった沖と西広は、最初の3品目でダウンしていた。今は焼き鳥にビールでとりあえず逃げの体勢。
「ん?レン?あれ?綿菓子。」
「…なんかレンが綿菓子食べてるところ想像すると、共食いみたいだな。」
 泉の言葉をまんま想像して、沖がビールを吹く。ぶっ。
「うわっ!沖!きったねぇ!」
 誰にも付かなかったけど、とりあえず田島の「えんがちょきったーかぎのんだー」攻撃に「まだその言葉は生きていたのか」と西広が感動。
「え、オレのとこじゃ「かぎしめたー」だぞ。」と泉が入り、レンがはてなマークをいっぱい浮かべている間に的当て屋を発見。

 レンがいないと気づいた時には、的当て屋には黒山の人だかり。最高得点の1000点のみにぶっすり刺さっている3本の矢。
 悔しそうなテキ屋のおっちゃん手には…PSP。
「うぉー!レン!今度貸して!」
 泉、大騒ぎ。
「あ、かき氷。」
 田島の言葉に立ち止まる三人。
『まだ食べるの!』
 西広と沖の絶叫は続く。



 「インテリアに」と栄口が1回で10匹の金魚を捕って、その足でレンたちに合流しようとした時に、視界にいれてしまった。
 地味に必死こいて楽しんでいる、花井阿部の姿。

 20超えた大人が何やっているのとか言おうと思ったけど、20超えた大人が金魚すくいやっているのだから何も言えない。だけど…でも…

「型抜き、楽しそうだね。」

 栄口の声は二人に聞こえていない。二人とも猫背になって、除虫作業でも見せないような真剣な顔で型抜きをやっている。
「ほっぽっといても平気かな?」
 レンにヨーヨー釣りの極意でも教えようかと彼らがいるあたりに行こうとした時、阿部の絶叫が響き渡る。ぎゃーす。つられて花井も失敗。口論、口げんか。で、買い直して再び猫背。
「いいもの聞けたし。」
 ふふんふ〜ん♪と異様に金魚密度が高い金魚すくいの袋×2を持って、栄口はその場を去った。

レン、田島、泉。
きつね、おかめ、ひょっとこ。

それぞれのお面を帽子のようにかぶって、わいわいとやっている。そこに栄口合流。
「…疲れてるね、西広、沖。」
「しばらくさっぱりしたものが食べたいよ。オレ。」
「同じく。」
 そういう二人の頭にもドラえもんとアンパンマンのお面。
「阿部と花井は?」
 沖の問いに栄口は楽しげに答える。
「二人でとっても楽しいことしてるよ。」
 想像できない、としゃがみ込んで、フランクフルトソーセージを買ってきた3人に不思議がられるのは2分後。



「なー、阿部。」
「なんだ?花井。」
 型抜きで失敗して、ビール片手に歩いている彼らの視界に入ってきたのは、早々に逃げた二人の姿。
「…やっぱり失敗してるな。」
「水谷は失敗してもいい。巣山が成功しないと…」
「あ、お前、エロDVDねらってんのか?」
「いや、栄口のデザート権。」
「そっちかよ!」
「じゃあ尋ねるが…花井。栄口、まだ今年一度も果物系のパイもしくはタルトを焼いていないんだぞ?」
「う。」
 栄口の料理のレパートリーはすごい。だが、彼のお菓子作りもまた素晴らしい。
「あの皮のパリパリにバニラビーンズが入ったアイスクリームをのっけて食べる…」
 阿部が畳みかけるように言う言葉はまさしく悪魔の言葉。
「うぉぉぉぉ、巣山、成功しろ!」
 実は隠れ甘いモノ好きな二人であった。



「すごい ね。」
「そうかー?」
 レンと田島の会話に栄口がまぁまぁと入る。
「レン、今流れているのが炭坑節。みんな輪になって踊ってるだろ?」
 うん、うん、とレンが頷く。
「踊って色々ヤなことを忘れるのが…」
「…だから、その一部無理無茶無謀な説明どーにかしろって。」
 たすっと泉の手刀が田島の頭にキマる。
「まぁ、夏の祭りはそっちのほうが強いかもね。何も言えないけど。」
 栄口が3杯目の日本酒に口をつけながら答える。
「なぁ、沖。」
「うん。西広、分かってる。」
「あ、二人とも気づいてた?」
「いや多分、気づいてないの、田島とレンだけだと思う。」

 踊りの輪の中に、花井と阿部の姿があるということに。

「ビール2杯で酔えるから、お手軽だよね。二人とも。」
 けろりと言いながら、3杯目の日本酒も飲み干す栄口。それに答えるモノはいなかった。
「オレ、ビール買ってくる。」
 西広が立ち上がる。
「あ、ならオレに日本酒。」はーい。と栄口。
「あ、オレ、ラムネ「オレも!レンのぶんも」」と田島と泉。
 沖が座るところを見つけ、ぎゅうぎゅうに座り込む。
「楽しいか?レン?」
 田島が尋ねる。

「う ん。楽し、い よ。」
 すごい平和だよ。

 そう二重に聞こえたのは気のせいか。
「はーい、お待ちどう…って、オレが座る所ないじゃん!」
「あー、つめてつめて…」
「うわっ、落ちる!」
「頑張れ泉!ファイトだ!」

 結局4人座りのベンチを男6人がぎゅう詰めで座るという、ぎょっとするような光景に陥ることとなる。



 もらった「ラムネ」という炭酸飲料は甘くて、美味しい。ゆらゆらと揺れる炭酸が、今いる自分の場所のように思えてしょ
うがなかった。
 優しくて、騒がしくて、楽しい。

 オレにとっては

 毎日、お祭りみたいなもんだ。

 阿部くんや栄口くんや田島くんや泉くんが、沖くんが巣山くんが、どんどんオレに色々教えてくれる。明るい、楽しい世界を。

「あ、阿部たちの足がよろけてきたな。酒回ってきたか?」
「そろそろ終わりみたいだな。帰るか。」
「おーい、花井、阿部ー。そろそろこっちに来い〜!」
「巣山と水谷、失敗したかな?」
「成功したかな?と聞かない所が泉らしいな!」
 めいめい喋る中に、へろへろになった阿部と花井が合流する。双方ともに顔が赤い。
「帰ったら、飲む!」
 栄口の宣言にぎょっとする沖、西広、花井、阿部の姿。明日は二日酔いだ。
「かえろーぜ!来年もまた来ような!」
「う うん!」
 田島の差し出した手を、しっかりと握って立ち上がったレンだった。



 おまけ。

 巣山と水谷のナンパは、結果として失敗に終わった。
 が、次の日の夕食後のデザートに、熱々のピーチパイが冷たいアイスクリームと一緒に饗された。
「同じ事考えてたヤツが他にいたんだ。」
 阿部と花井の会話に、ニヤリと笑ったのは…………………………他の者より2倍以上の量がのっけられた皿を持った、泉だった。


今年は「これぞ夏!」というのは夏コミくらしかありませんでした。←それもどうよ?
来年はもっと内容のある……(以下略)

冬は彼ら何してんでしょ。考えつかない 笑