祭りだよ!全員集合?
 浴衣を買いに行こう


※私は今年も浴衣を買いに行かなかったので、テキトーに流してください。あとびっぷな話も。

 今度の日曜、近所でお祭りがあるんだとー!
 ドタドタと食堂に走り込んできた田島。そこにいたのは阿部と花井と栄口と泉。
「祭りかー。あそこの神社か?」
 ニシウラから歩いて15分くらいの所にこぢんまりとした神社がある。
「そそ。だから、お祭りいこーぜー!」
「だから、という文字がどこから出てくるか、オレは知りたい。」
 はぁ、と溜息をつく栄口。エプロンで手を拭く姿は様になっている。
「…レンを連れて、お祭りにいこうぜ、っつーことだろ?田島。」
 泉の溜息まじりの言葉に田島は満面の笑顔で「おぅっ!」と答える。
「んじゃあ、行くか。」
「そうしようそうしよう。」
 この一連の会話に入っていない者が半分ぶつくされている。
 栄口がそれ見てぶった切る。
「阿部は留守番だろ?どーせ。」
 全員イベントには参加しないこの男が参加するわけがない。
 全員の目がそう語っている。

だが。

「レンの浴衣を用意してやらねーとな。」

 にやり。

「………はいはい、じゃあ、二度と目にかけられない阿部の浴衣姿を拝みに行きますか。」
「そーだなー。」
「オレもレンの浴衣一緒に決める!」
「んじゃあ、持ってないヤツもいることだから、全員で行くか。泉、田島、レンはもう寝てるから他全員に通達。」
『了解!』
 どたどたと二人が出て行く。
「除虫屋の経費から少しもらうとして…予算は……」
 ぶつぶつと言う栄口。
「あいつらのお守りは大変なんだよなー。」
 ぶつぶつと言う花井。

 とりあえず、のけ者にされていると分かった阿部。
 チッと舌打ちして、自室へと戻っていった。


「え、お祭 り?」
 寝て起きて、栄口から聞いた話はレンを驚かせるには十分のものであったらしい。
「そう、お祭り。」
 きょとんとして、やや不思議そうにキョドキョドときいてくる。
「…トマトとか 投げ、合う の?」
「それスペインの祭りだから。」
 すかさず西広がツッコミ。日本産のちょっと固めのトマト投げ合ったら、青あざ間違いなしだろう。確定的に。
「お祭 り……行った こと な い。」
 早速しょぼくれるレンに、日経新聞読んでた阿部が言う。
「なら今日が初めてでいいだろ?お前がここにいるんなら。」
「はい。阿部さ…くんが、ここにいさせてくださるなら。」
 おどおど、きょどきょど。
「敬語はやめろ。」

 びしぃっ。びょくっ。

「はいはい、また阿部はレンをいじめない。」
 レンの朝食を置きつつ、栄口が注意する。
「あー、レン、おはよー!」
 ドアが開いて、がっつりと寝癖がついた田島が泉とともにやってくる。
「おはよ う。田島く ん。泉、くん!」
 独特の話し方にも慣れてきた今日この頃である。
「栄口からお祭りの話きいたかー?」
 ももも、もも。と食べ出しているレンに、田島はさっそく尋ねる。

 ももも、も。ごっくん。

「…うん。」
「だから、全員食べ終わったら、みんなで浴衣買いにいくぞ!」
「ゆか た?」
 きょとん。
「おお。お祭りの戦闘服……イテッ」
 田島の言葉の最後は、泉のゲンコツで終わる。
「レンにワケ分からない知識植え付けない。」
「う……あ…………」
 流れるような一連の作業についていけないレン。
「大丈夫だよ。浴衣買うお金はあるから。」
 はいお茶、と差し出しながら、栄口は笑顔で言う。
「お…お金……は もって る よ!」
「いくらくらい?」
「…見てないから分からない。」
 はぁ、さいですか。
「今までどうやって服とか買ってたんだ?」
「カード。です。阿部さ…くん。」
 どっからかぴっと出してきたレンが持っているクレジットカード。
「………ブラックだ…………」
 巣山が冷や汗をかく。
「初めて見る……」
 沖も冷や汗。
「レン、今度貸して〜ふぎゃっ」
 水谷がへらへらっと言って、阿部と栄口にたたき落とされている。
「武器と か 必要 になった、ら、現金を こっから だして、買う。」
「武器は必要ねーし、除虫屋の金あるらしいから、今日は使わないぞー!」
 田島がニッカニッカ笑いながら言う。ブラックカードの意味は全く分かっていない。そして未成年が何故使えるのかというツッコミも誰からも入らない。
「え?」
 固まるレン。
「除虫屋だって、みんなから少しずつお金をもらって、溜めている所があるんだ。」
 巣山が言う。ふにょ、とレンが柔らかくなる。
「だーかーらー、みんなで浴衣買いに行くんだー!」
「みんな で?」
 阿部をちらりと見る。
「ああ、みんなで、だ。」
 何となく言いたいことが分かったようで、今回はうまく会話が成立。
「楽しみだなー。」
「おぅ。」
 もう楽しみ楽しみと笑いあう泉と田島。
「コーディネイトはまかせて。」
 ブイサインの水谷。
「んじゃあ、どこに行こうか。」
「隣町の百貨店にある呉服店でいいんじゃない?」
 栄口の言葉を受ける西広。
「じゃあ、そこへゴー!」
 わーっと走り出す田島の襟をがしっと握って。
「お前、朝飯まだだし、すげぇ格好だし、何よりレンもまだ食べ終わってない。オレも。」
 泉がしきる。
 出発したのは、1時間半後のことだった。



「泉、田島、お前ら甚平でいいんじゃない?」
「おぅ!」
 さっそく甚平売り場へ直行する二人。ついでについていく西広。彼は自宅から浴衣を持ってきた唯一の人である。
「レンはどの柄がいいかな?」
「水谷、そこ、浴衣でも女性用。」
「…ちぇっ」
「そこで舌打ち?」
 水谷、栄口、巣山の会話を背中で聞きながら、阿部はさっさとうっすらと日本独自の模様が入っている浴衣を選んでいる。センスは悪くはない。
「うわっ、阿部、しぶっ」
 さっそく水谷がチャチャを入れる。
「うっせー。さっさと決めろ。」
「オレはこれで。」
 巣山は濃い緑色に灰色の糸が縦に入っている。
「巣山も渋いねー。」
 栄口の言葉に「まぁな。」と答えると、振り向く。
 きょとんと売り場に立っているレン。水谷はいそいそと自分のとレンのとをかき集めて探している。

 そこへおのおの甚平を持った田島と泉、西広が合流。わいわいがやがやが始まる。
「レンならこの柄じゃねぇ?」
 田島が出してきたのはスイカ模様。
「…どこで発見したよそれ。子供用って書いてあるだろ!」
 すかさずツッコミ泉。
「うーん。レンの色ねぇ……」
 悩みまくる水谷。ちなみに彼のところには数種類の浴衣が既に置いてある。どっちのかすら見分けが付かない。
「これは…」
「あはは、阿部も同じ間違えしてるよ、それ女性用。」
 ぼそりと呟いて出したそれをしっかりツッコミ入れてる栄口。
「レン、これどう?」
 巣山が出してきたのは水色無地の浴衣。
「センスいいなぁ、巣山。」
 驚嘆、沖。
「まぁ、それはそれで。」
 照れてる照れてるし。
「みーずーたーにー。」
「うん。この4種類までしぼったから、みんなで考えて。」
 オレの選ぶから。とごそごそ。レンの浴衣。
「…白地に模様、灰色の緑色?紺地に模様、明るい緑色。」
「白地…瓢箪唐草かな?、利休鼠、紺地に白の青海波、草色に…下がシダ。」
 田島のツッコミは今回は西広が担当した。
「全部で5種類。…全部似合いそうだなぁ。」
 色のセンスは確かに水谷はいい。
 だからこそ悩む。
 全員が頭を抱える。ああ、なんて贅沢な悩み。


 とりあえず、レンは若いんだから、という栄口の言葉で、ちょっと渋めの利休鼠は予選落ち。
「白のヒョウタンからコマ模様、いいな。」
 田島の意見に頷く西広。「瓢箪唐草だよ。」と呟いたのは全員の耳に入っている。
「紺も捨てがたいな。」
 花井がうーん。と唸る。
「レンが着るには少し渋め?…って、阿部、そっちは女性用何度言えば分かる?
 栄口が出すのは草色の浴衣。最後は怒りモードが入ってる。笑顔で。
「オレはきーめた♪」
 ようやく水谷が戻ってくる。オフホワイトに、各所に青緑色の模様が入っている。
「お、なーんか幽霊みてー。」
 一刀両断。田島さん、ここは虫退治の場所ではありません。
「に あう。よ。」
 珍しく、レンがフォローにはいる。うれピー、と水谷が泣く。
「水色もいいねぇ。」
 沖もどうすればいいか悩み始めている。
「はいはい、はーい!」と田島が手を挙げる。
「はい田島くん、どーぞ。」
 胡乱な目で見る泉。
「レン、水色とか紺にすると「なんかまんま武器もってますー。」みたいな感じになると思う!」

 なるほど。

 全員一致で水色と紺は落選。残るは白と明るい緑の草色。
「あー、そだ。ここまで残ったら、レンに決めてもらおう。…レン!」
「うひゃあうあい!」
 わけわからない叫び声を発するレンに、沖と巣山が出してくる。
「どっちがいい?」
「う…あ………」
 白か、緑か。
 レンの耳からぷすぷすシューっと音がして、目がぐるぐるになっている。
「こっちがいいんじゃないか?」
 指さしたのは、草色のほう。
 指の主は…
「阿部さ…くん。」

「それに、しま す。」とのレンの言葉で、全員の浴衣が決まり、寸法直しが始まる。
 レンのを一番最初にやってもらい、甚平組の泉と田島に「レンの服まだ少ないから見に行こうぜ!」とずーりずーりと引っ張って行かれた。
 で、数分後、栄口の携帯に電話。
「もしもーし。はい、はいぃ?」
 心底驚いちゃったよ、オレ。という素っ頓狂な声を出している栄口に、周囲の視線が集まる。「次、栄口だぞ。」と直しを終えた花井が声をかけ、電話もついでにかわる。
「…オレだ。…今どこにいる?…はぁ?」
 花井も素っ頓狂な声。
「分かった。オレも行くから、迎えに来てくれ。」
 そこで電話が切れる。花井、呆然。
「どうした?」
 阿部が尋ねると、よろよろと花井が返してくる。
「あいつら、VIPコーナーにいるらしい。…レンがカードを見せた途端、案内されたらしい。」
 はぁ。とそこにいる全員が溜息をつく。
「目の保養だと思って行ってみれば?」
「そうさせてもらうよ。後で全員来いよな。」
 最後は恫喝じみた声で、花井がお子様三人のほうへと向かう。
「あの苦労性、大変だな。」
 天下の阿部(様)がコメントした。

 お前が一番大変にしてるのっ

 全員の意見は一致した。



 上から下まであわせると、合計100万円以上(本人たちは知らない)。
 以上、レンの試着である。
「どうでございますか?」
「どう、かなぁ?」
 きょど、と二人を見てみる。
「シャツ一つとってもすげーのな。」
 田島がしげしげと服を眺める。…で、ちょっと目がとまる。
「なー、レン。あれお前に似合いそう。」
 キンキンキラキラの中にある、不思議な模様のシルバーのブレスレット。
「そ、そうか な?」
 ウヒ、と小さく笑う。
「その服も似合ってるよ。」
 泉も楽しげに言う。
「あ りがと う。」
 そうだ、とレンが思いついた。
「こ の、ブレスレット、3つ あります か?」
「はい、ございます。すぐご用意してまいります。」
 その言葉にどよめく二人。
「いつもの お れい。」
 呟くレン。
「ありがとー。なら有り難くうけとっとくー。」
「おい!田島!こーゆー所の…」
「分かってるって!あとモモカン、シガポ、花井に阿部に栄口に巣山に水谷に沖に西広のも選ばないと。」
 うん。とレンが頷く。
「大学生組は3人3人でわけて…こんなんどうだ?」
「あ、オレもそう思った。巣山と沖と西広だろ?」
「うん。そ うだ ね。」
 レンも楽しげに頷く。
「これ 阿部さ…くんとか…」
「あ、あいそうあいそう。」
「レンもセンスいいなー。」
「ウヒ。」


 それぞれの会計を済ませた所で結構迷って、結局泉が迎えに行った花井が到着。すごく金がかかっている内装に驚くやらおどろくやら。
 その中で平然と買い物するレンに驚くやら驚くやら…
「楽しかったなー。」
 田島の左の腕に、見慣れないシルバーのブレスレット。見ると泉とレンにもついている。
「お…前ら……」
「あ、レンが買ってくれた。」
 さらっと田島が言う。
「お前らのもだぞ?あとでレンに礼言わないと。」
 泉もさらっと言う。
「な、な、な、な」
 ここはいつもの買い物に0が二つくらいついている(値札がそもそもついてない)所で、平然と買い物できるお前らってどーよ、とか、平気でプレゼントできるレンの財布の中身ってどーよ、とか。
 言いたいことは沢山あったけど。
「みんな うけいれて くれ た。 おれい。」
 嬉しそうに言うレンを見ると、どうしようもなくなってしまう。
 その時、花井の携帯に連絡。全員終わったらしい。
「マックたべよーぜ!」
「あ、オレふるれりろーって言ってみようかな?」
「もう無理だろ。」
 レンが買った荷物を泉と田島が持ちながら、レンは嬉しそうにVIPルームを後にした。



 花井たちには金のブレスレット。巣山たちには銀の別の模様のブレスレット。栄口には銀の中にゲルマニウムが入っているネックレス、モモカンには輝石のついたネックレス、シガポには太い金のネックレス。

「ありがと。レン。」
 それぞれ口にしてくれた言葉が嬉しい。
「今度渋谷で買い物してみよっぜ!」
「あー、それいいかも。」
 高校生コンビが次の場所を決めている。右手にハンバーガー、左手にジュースを持っての会話。それにふにゃふにゃとついていくレン(多分場所とか良く分かっていないのだろう)。
 他の者たちは、レンが「お礼。」と言って渡してくれたものをやはり食べながらしげしげと見ている。
「浴衣ができあがって、夏祭りがくるの、楽しみだなー。」
 それは全員の意見で、うん。と頷いた。



 余談。

 なお、志賀に送られたネックレスは、ちょっぴり夫婦げんかのもとになったとかならないとか。


夏物が書きたくなり、急遽書き上げました。
まだレンが阿部様といいそうになっている時だから、まだ早い時期なのでしょう(他人事)。