「は〜、笑った笑った。」
 花井は笑いすぎで出た涙を拳で拭くと、エンジンをかけた。
「出発前で良かったね。」
 西広の言葉に、車の中の者は全員頷いたのであった。

 レンたちがニシウラへと戻ってくると…もう何がなんだかわからない状態になった。座らされて、コップに飲み物(アルコールが入っていたかもしれない)をどばどば入れられ、乾杯!あっという間に大騒ぎになった。
 「レン、胃袋がびっくりしない程度に飲み食いするんだよ。」と言っていた栄口は一升瓶抱えて河合と飲みあっている。大地は二口飲んだだけで強制睡眠モードへと突入している。田島と泉は珍しく気圧されたのか、アルコールには手を出さずにジュースを飲みながら時折ゲラゲラと笑いあっている。巣山と秋丸はぼそぼそと情報交換に忙しい。阿部は榛名と飲み比べを始めた。やんやと沖と高瀬と利央が囃し立てる。
「レン〜飲んで食ってる〜?」
 水谷が話しかけた時、レンは元気な表情をしていた。
「あ、そうだ。」
 飲み比べをしていた阿部がふらふらと立ち上がり、よろよろと部屋を出ていく。
 何だろうと水谷と田島と泉がレンのそばにやってくる。阿部が動く。それはニシウラのメンバーによっては吉にも凶、大凶にも出かねない。…大吉ということはない。ちなみに付け足しておけば。
 何なんだ?と阿部の消えたドアを見ながら酒やジュースをかぱかぱ。少しして再度ドアが開き、何かを持った阿部が登場。全員の視線が阿部に注がれる。
「レン、学校の入学通知書だ。」

 へ?あ?ほ?と戸惑いと驚きの声があがる。

「ち、ちょっと阿部!」
 聞いてねーぞの田島と泉のブーイングの中、花井と栄口が立ち上がる。阿部はニヤリと笑うと「こうでもしないと延々入学できそうにねぇからな。」と語る。
 学校は泉や田島の通う高校ではなく、阿部たち大学生が通う学校の高等部であった。
「レンの古典と日本史の能力をマイナスと考え、中学じゃなく高校になったようだな。」
 そこらへんに関しては大学生組が黙る。たまにレンから訊いているのだ。単位にしてどれだけ助かっているか。
 対する高校生組はブーイングの嵐だ。泉は高校3年生でレンがもしも入学しても卒業しているが、田島はあと一年ある。何度か栄口とも話し合っていたのだ。「レンに普通の世界を。」と。
 阿部が渡した学校案内は、除虫屋クラスが普通に存在する日本で一つのマンモス高であった。
「レンの入るクラスは『特殊除虫クラス』だ。」

 あそこー?と秋丸が言う。

 別名除虫屋のなりそこないクラス。

 それを聞いた大学生組以外の者が、一斉にブーイング。そんなとこいれんのかよレンは普通の除虫屋だろ全くきいてないよなにそれ…それをぴた、と止めたのは「そうか!誘拐防止の為だ。」と言った秋丸の声であった。
 「外部から通う特殊除虫クラスの生徒には最新の無人タクシーが割り振られんだ。」との秋丸の説明に全員がほーと納得の声をあげる。確かに今回のような事が起きて、今度こそ無事ではなかったら。という意識が過る。
 「この事はモモカンもシガポも了承済みだ。」と阿部が言うと、全員(レン除く)が何かなま暖かい視線で阿部をみやる。
「いつもこうならなぁ。」
 キングオブ・地雷踏みの文貴くんがいつものように地雷を踏む。見る間に鬼の形相になっていく阿部の、そして水谷の近くにいた者はそそくさと逃げた。速い。
 プロレス技をかけられぎゃあぎゃあ叫ぶ水谷と阿部を置き去りに、レンを中心にそれぞれコップを持ったその場のメンバーが全員集まる。花井リーダーなんだから!と巣山の声に照れ臭そうに花井が立ち上がる。いいぞー!と誰かが声をあげる。市原だろうか。大地も叩き起こされ水の入ったコップを手渡される。
「えー。今日は忙しい中…長いのはいいか。」
 いいぞー!さっさとやれー!と泉と田島からあがる。
「レンの退院と入学に乾杯!」

 かんぱーい!と声があがる。わけわからず呆然としていたレンに田島が抱きつく。
「レンも高校生だ!良かったな!」
 田島の簡潔な説明に、レンがようやく納得する。
「あ あり、が、とう…」
 後はまたまたらんちき騒ぎ。
 こうして除虫屋たちは互いを労い、楽しんだのであった。


 明日から始まる生活を少しだけ忘れて…。

みなさんもお疲れさまでした。ありがとうございました。

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