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なら、と栄口が口を開いた。
「暇な時、たまにレンの顔を見に来てやってくれない?」 はっと叶が顔を上げる。驚きと、喜び。 「ここに来た時、熱を出したり、色々脅えたり、レンはすごく不安定だった。熱にうなされてずっと君の名前を呼んでいた。シュウちゃん、シュウちゃん、て。」 ぐっと叶は息の奥のほうで声をした。 「君たちの除虫屋に組み込むことは絶対にさせない。…けど、友人として来てくれるなら大歓迎だな。オレとしては。」 言ってちらりと花井を見やる。「ああ、そうだな。」…花井の同意は溜め息と一緒だった。 裏のセリフは「他の奴らはどうでるか知らないけど。」というのが含まれているのががっつり分かったからだ。そういう所はやはり栄口というヤツ所以なんだろう。 「あ、ありがとう。」 その時ドアが開いて、ほくほく顔のレンと、何やらげっそりとした水谷が入ってきた。 「叶く ん。これ、とこ れ、これ。調整し てみた け ど…?」 がしゃがしゃがしゃがしゃとテーブルの上に何やら物騒な代物ばかり置かれる。 「あ、これ!これの調整はやっぱりレンが一番なんだよ。自分でも他の奴らでもここまで上手く調整できるのいなくてさー。」 叶がぱっと顔を輝かせる。二つ三つ、武器を太陽にかざす。ぎらりとしたナイフの一つが太陽の光に反射し、水谷は目をつぶった。 「そんな… ウヒッ」 見たことのない武器を苦もなく操りながら、二人は話し出す。 「レン、お前、16になったら攻撃士のテストがあるけど、出来る限り手抜きしろよ?」 叶が武器を見ながらもレンに忠告をしっかりとした。 「え…?」 「お前、そんなヒョロい体で武器持って、はじめてです〜。という顔なんて絶対にできないから。」 「う。」 その言葉には全員が深く頷いた。14歳なのだ。武器の取り扱いには慣れているけど。慣れすぎてるけど。 「そうだな、レンにはその特訓をしてもらうかな?」 花井が苦笑しながら言うと、レンを除く全員が笑った。漸く緊張が溶けた。 叶は全ての武器を軽くチェックすると、どこだか分からないような所へとまたしまっていく。そして全てのモノがしまわれた時には、夕焼けが始まっていた。そろそろ他の者たちも帰ってくる。 「じゃあ、本当に帰るよ。」 …で、窓に向かうのはやはりレンの元・仲間だからでしょうか。 「叶、靴は…」 花井が尋ねる。こともなげに「真下だろ?」と言って飛び降りる。レンもそれに続こうとしたが、すんでのところ水谷にタックルされて止められた。水谷の背後には栄口。なんだか「一仕事した〜」という顔をしている。 「じゃあな!レン!」 叶は靴を履くと、さっと手をあげる。 「また ね!かの…シュウちゃん!」 窓から身を乗り出してレンが涙声で言った。叶の動きが止まる。 「ありがとな!レン。またな!」 瞬間、叶の姿が見えなくなった。少しだけ結界が揺れる。次の瞬間には慣れた結界の揺れ。 「ギリギリ…か。」 話し声。沖と巣山と阿部らしい。……………って。 「授業、サボっちゃったな。」 てへ。と水谷が笑った。 「まぁ、それだけの収穫はあったから。良しとするさ。」 珍しく、花井が良きに計らえ的な台詞を口にした。 「んじゃあ、花井、晩ご飯作るの手伝って。水谷は風呂掃除。レンは………武器を阿部に見せること。」 おぅ。 あいよ。 ひ……ひゃいっ 三人三様の声が返ってきて、ソファーの上に置かれた茶封筒以外、いつもの日常へと戻っていく。 茶封筒の中身は、モモカンを通じてお上に報告されることになるだろう。それまでには巣山とかに解析してもらって、ある程度のレンの今までの状態を知っててもらう必要がある。その為には叶が来たことを話さないといけないが…まぁ、栄口に頼んでおいてそれは問題ないだろう。 なお、見つかった武器の半分はニシヒロ工房ではなく沖工房に厳重保管され、阿部からこんこんと説教され、レンはウサギ目になるまで泣いていたことを告げておく。 |
栄口の心の声は、意外と花井が聞き取りやすいらしい 笑
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