『阿部!こっちはなんとかするから、花井に結界の強化と栄口たちを見てやって!』
 泉の声に阿部は冷静な声で「分かった。」と答える。
「栄口!」
『潰してもつぶしても出てくるよ!あと何匹くらい?』
「お前の所と水谷の所が一番多い所だ。大体あと………」
『あと?』
 水谷の声。かなり焦っている。
「…めいめい最低でも500匹。」
『500匹…すごいねぇ、それは。』
 呆れた口調の栄口だが、その息は荒い。
『それに変な所からも出てきてるな。花井は平気なの?』
 水谷の心配げな声。
「大丈夫だ。今結界を強化した。」
 花井がそれに答える。結界のあちらこちらがきしみをあげている。その度に花井の身体も揺れる。

脂汗。

「お…オレ……」
「お前は何もやるな。」
 阿部がぴしゃりとはねつける。阿部の額からも汗。冷や汗。
「栄口!一気にたたみ込め!水谷!一度退路を確認しろ!泉!田島!ある程度まで傷を負わせたら逃げろ!この大きさの爆発もしくは溶解だと骨までいくぞ!」
『わかった!』
『了解!』 
『おぅ!』
『わかってる!』
 声はかなり弱い。

  オレ、何もできない?
  なにも、できない?

 指が教えてくれる。全員かなり消耗していることを。自分一人だけならともかく、他の人が傷ついていく…さっきまで笑いあっていた仲間たちが傷ついていく。

  何ができる?
  どうすれば、何が できる?
  オレができることは?

 ぴく、とレンの手が動く。

 ちょうちょは、まだ 先。

 あの時、あの歌でできたんだから、今回もきっとできる。さっき色々試してみたじゃないか。
 この優しい人たちに、できることであれば、なんだって。

「レン君?」

 モモカンの声、だと思う。こんなに全身に神経を張り巡らせたのはいつのことだろう。

   守れます、よう に。
   みんな を 守って。

 両手でわっかを作る。きっと、きっとできる。

  ひとりじゃ ない から。

  ひとりじゃ ない。

  さみしくなんか な い!

「阿部くん!レン君が!」
「レン?何をする?」

 結界に走り寄る。指が教えてくれる。全員の位置。結界にわっかにしたままの手を押しつけ、あまりにもその場にそぐわない歌を歌う。

 いや、祈る。

「しゃぼん だま とんだ。
みん な に とんだ。
みんな に とまって
みんな を まもる。」

 レンの身体が緑色に染まる─────

「レン!」


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