「あー、緊急除虫作業のデータがきたのが?」
 阿倍の言葉に栄口が答える。
「えーと、16時26分。」

 さらさら。

「んで、虫の種類は?」
「あー、レンに「Wind」のほうがいいかってきかれたから頷いたら…あっという間にいなくなっちゃって。」
 食堂兼会議室にて。ほぼ全員…今回はモモカンもシガポも含む…が集まっている。レンのみ自室。
「かけつけたらぼろぼろの姿で、その時点で分かったのが爆発型と強酸性の融解型。数の報告の前に「自分への治癒報告」になっちゃったから。」

 さらさら。ぴた。

 正式な報告書への下書き原稿を書いてた阿部の手が止まる。

「それから「あれ」か?」
 阿部がくい、としゃくる。全員が見る方向は…レンの部屋。今、彼は一人、誰も受け入れることも拒み、治癒している。こっそりとカメラをしこんでおいたので、レンにもし何かあった場合はすぐに除虫屋専門に扱う病院に連絡することになっている。
「そう。…見たこと無い状態になっている上に、他の除虫屋の人も来そうだったから。」
 立ち去る時に、バッチを置いておくしかできなかったよ。と栄口が溜息とともに言った。
「バッチの件はこっちに照会が来たわ。栄口くんの行動は正解。」
 モモカンがにっこりと笑って言った。少しだけほっと胸をなで下ろす栄口。お疲れ、と肩を叩く水谷と沖。
「で、と。」

どさ。

 本と書類、双方ずつ大体20pの高さ。計40p。
「これ……なんスか?」
 巣山が恐る恐る訊ねる。
「聞きたい?」
 モモカン、にっこり。悪魔笑い。
「…アマリキキタクナイデス。」
 西広がドン引きしながら呟くように言う。が、にっこりと笑ってモモカンは一気に言い放った。
「癒し手の歴史及びレベル認定方法。そして…ニシウラに常駐させておくための書類。」

げ。

「レン君が「癒し手」と分かった阿部くん。やっぱりすごいわねぇ。叩き台は作るから、「目」のあなたが書いてね。」
「…はい。」
 うわ、とっても嫌そう。(でも手伝わない)
「田島くん。」
「…ハイ。」
 ナニオレモコノショルイカカナイトイケナイノ?という顔でモモカンのほうをそっと向く。
「あなた前に、レン君のお隣さんだったって言ってたわよね。」
「は、ハイ。」
 脅える田島さん。全員の視線が田島とモモカンに注がれる。
「で、田島くん、レン君にケガを治してもらったって言ってたわよねーぇ?」
「…ハイ」
 たしかにいいました。
「それだけでねー、癒し手のレベルとニシウラへの対応が完全に変わってきちゃうの。そうね、この書類の2倍は楽々ぶん。」
「ど、どういうコトですか?」
 花井が恐る恐る訊ねる。
「癒し手の存在がそれだけ貴重かつ重要だから。その上」
 きゅっとモモカンの顔が引き締まる。
「非公開にしないといけないから。「癒し手特例法」で。」
 特例法のことが書いてあるのがその本。
「全部頭にたたき込んでおいてね。阿部くん、花井くん、栄口くん。」

うっ、げ、うわっ

「あと田島くん、レン君があなたを治療した時のことを書いて報告。泉くんも手伝ってあげて。」

うわぁぁぁぁ …はい。

「あたしも阿部くんから連絡うけて、志賀先生と二人で大騒ぎしちゃったんだけど。レン君が「癒し手」であるということは突然だけど証明されちゃったから。後手後手にまわっちゃったのよ。田島くんの提出は2日後。読破は花井くん、阿部くん、栄口くんの順番、申請書類の作成は…うーん。2週間まで。それまで手伝いは他全員で手伝ってあげてね。」

はーい。

 元気な返事はにしうらーぜの証。

「なー、泉、『癒し手』って何だ?」
「うっさい、オレに聞くな。花井あたりに聞け。」
「いや、オレにきかれても…」
「阿部には……」


 ただし全員、半分以上ちんぷんかんぷんのまま、夜は更けた。

 なお、夕食は全員インスタントラーメンであったことを付記しておく。

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モモカン書いてて楽しい。