「まず、結論から言うわねー。レン君はニシウラに所属になりましたー!」

へあ?と全員の顔があがる。

「戸籍消滅まであとちょっとだったけど間に合って…レン君は、三橋 廉…えーっと、みっつのはしに、せいれんけっぱくのれん、ね?分かる?分かるわよね?田島くん。」
「げ。」

 つらー、と田島の額から汗が流れる。

「…だからお前にゃ日本語教えるのは無理だったんだって。」
 泉がため息をつく。さもありなん。
「せ、せいれんけっぱくって……真夜中にこっそり帰ってくる水谷の逆のヤツのことだろ?」
 苦し紛れに言う田島の言葉に、ぎょっとなる水谷。溜息をつく花井、ケッと笑う阿部。
「みーずーたーにーくーん?」

 がしっ

「うわぁぁぁっ!」
 ぎりぎりぎり、という音が水谷の席から離れているレンの耳にも届いてきそうな感じで、思わず田島の後ろに隠れた。田島は…とりあえず、硬直している。泉はまたため息をつきながら、ぽんぽんとレンの頭を撫でるように叩いてやる。
「まぁ、これからは栄口くんか誰かに電話してねv」
 手が離れた時、水谷の顔は真っ青で、人形のようにこくこくこくこくこくと頷いていたが、誰も手を貸さなかった。…隣が阿部でその反対側には誰もいない…つまり端の席だったわけで……
「…と、まぁ、そんなわけで、廉くん…言いづらくなっちゃったからレン君でいいわね!…レン君の歳は14歳。彼の失踪届が受理されたのが少し遅れていたからホンットーにあと少しでレン君死んでたわよ。良かったねー。」
「し、死んで…?」
「そ、社会的死亡ってヤツかな?パスポートとかとれないし、病院に行っても全額負担になるし。」
「?」
 レンはそこできょとんとなる。
「レン、お前、病院行ったことあるか?」
 泉の問いに、恐る恐ると答える。
「仕事で…あ、あと は、け、けんきゅ…研究所で ひ ひとり で。ぱ、パスポートなくてもどこでも行け た。」
「…それって、密入国?」
 巣山がレン以上に恐る恐ると訊ねる。
「…はい。」
 さらに恐る恐る…というか、吐息のような返事で答えが戻ってくる。もう目の端に涙が浮かんでいる。
「はーい、そこまでにしましょーね!」
 モモカンの声に全員の視線が再度集中する。
「レン君はとりあえず「護り手」として登録ができました。あの「虫」の中覆っていた障壁が「護り手」の基本データと一致したのよー!」
『護り手?』
 この中にはいないなー、と全員が首をかしげる。
「護り手は、虫に対する個人的な防御をあげる役割よ。なかなかいないんだから!」
 レン君もここにいていいのよ?とモモカンは笑いかけた。
「オレ……ここに……?」
「やったなー!レンー!」
 がばちょっ!とばかり田島が抱きしめた。むぎゅ、と小さな声が聞こえたが、とりあえずその声も聞こえないくらい、周囲も盛り上がっていた。
「次回の緊急か定期の除虫作業が入ったら、レン君にも参加してもらいます。というわけで。」
 モモカンはにっこりとレンに笑いかけた。
「あらためて、ようこそ、「ニシウラ」へ。」

 その時のレンの顔といったら…
 笑っているのか泣いているのかすら分からないくらいぐちゃぐちゃだったけど。

 ウヒ。

 その特徴ある笑い声で、ああ、嬉しいんだ。と栄口は素直に喜んだ。
 近いうちにレンの部屋を作らないと。買い物だってあるし…さぁ、楽しみだ。


 洗面所に、新しいコップとか歯ブラシとか、揃う日も近い。


 今日もゆっくり寝ていいんだよ。レン。


 田島が「オレの弟!」と宣言しているのを阿部がはたいている。キョドるレン。

 ニシウラも一人増えて、さらににぎやかになりそうだ。


戻る


うぇるかむ、まい、ほーむ。