つけられて、はなれない
離してくれない。話してほしい。
永遠に約束された夕方の太陽。高くならないし、沈まない。
ここは彼らの世界。
彼が守る世界。
泉と田島は無論のこと、栄口もザルを超えたワクだった。
「お前、ニンゲンのくせに良く飲むなぁ。」と泉があきれるくらい、よく飲んだ。
「そんなそんな、オレ、肝臓ぴちぴちしてるから。」といつもの笑い方で栄口が答える。枡を中身が少なくなった樽に突っ込む。くみ上げて、漏れたしずくも逃さないと慌てて口をつける。
「しかし…美味しいなぁ、このお酒。」
見回すと、花井、阿部、水谷は既に屍と化している。
「だろ?泉が作ったんだから。あったりまえなんだけどな?」
「そういえば、田島も泉も精霊なんだっけ?」
そうそう。と二人とも頷く。
「泉は酒の精霊…というより、まんま水?」
「…良く分かるな。…田島は分かるか?」
泉が枡を突っ込みながら尋ねる。
「田島は…分かんないなぁ。なんか色々入ってる感じ?」
「んー、そこまでは合ってる。本当に色々入ってる。」
な、田島。と言うと「そーだなー。」という返事。
「おかげで三橋にはいつも苦労させちまう。」
ぶちぶちと言い出す田島。さっきまで明るく朗らかに阿部を潰していたのがウソのようだ(潰れたとたんに花井にターゲットが絞られた)。
「オレの名字、田島ってさぁ。」
はじめて逢って、名前を付けられた時、「この国は田んぼでできているんだよ。」っていう理由からつけられたんだよ。
田島は枡を口にしながら言う。喜びと、ちょっとだけの寂寥感。
「名前をつけてもらうって、こんなに嬉しくて、こんなにありがたいものとは思わなかったなぁ。」
泉もしみじみと言う。枡を樽の中に入れる。がすっという音。どうやら3人で飲みきってしまったらしい。
「栄口ももう寝ろ。三橋が作業開始といったら作業開始だから。」
「分かった。おやすみ。」
ごそごそと栄口は布団に潜り込む。それを確認して、田島と泉は襖を閉めた。
部屋の中は、ほぼ真っ暗になった。栄口たちの意識も。