ぶわっと風を受け、地面に降りる。

他の姿を持たないモノたちから聞いた場所はここだった。

なんか地面が柔らかい。

下を見て、息を飲む。

人が下敷きになっていた。



 永遠に約束された夕方の太陽。高くならないし、沈まない。

 ここは彼らの世界。

 彼が守る世界。



 蝉の鳴き声がうるさい。
「なぁ、花井?」
 後ろを歩いていた栄口が真ん中を歩く長身に尋ねる。
「なんだ?」
 振り向かない。そんな余力は残っていない。
「ケータイが使えなくなって、結構たつと思うんだけど、夜にならないね。」
 がさがさと背の高い草をかき分けてずっと先を進んでいる阿部の耳にも入ったのだろう。肩が動く。
「言われてみれば…ずっとこの状態だったし。」

 卒業旅行にでかけよう。と言ったのは水谷。のったのは栄口と花井。無理矢理連れてきた阿部。
 それぞれ別の会社に内定が決まり、この夏休みが学生最後の夏休み。つまり来年の今頃は社会人というカテゴリに入ってしまう。毎日顔を合わせることもないだろう。ということで、今更海外?なら逆に国内、ということで、2泊3日の予定でバイトのシフトあわせて、いわゆる「ド田舎」という所へとやってきた。荷物は背中に背負っているリュックのみ。「ちょっとそこの山の麓まで行ってみよう。」と出たのが朝。頂上についたのは昼過ぎ。そして…ずっと夕方。

「おかしいな。確かに。」
「ヘンだ。」

 阿部とはもうかなり離れてしまっている。彼の姿を見ることができない。
「おーい!阿部!」
 花井が呼ぶ。返事がない。彼は一番気が短く、荒い。良く就職できたもんだ。と周囲の談。
「全く…協調性ナッシングだなー。相変わらず。」
 うんうん。と水谷が言って頷いている。
「しかし…喉が渇いたな。」
 うんうん。と今度は3人全員が頷く。
「水が飲みたい。こーゆー所の清水って美味しいんだろ?」
 水谷が言い出す。

「水ならある。」

 知らない声が耳に入る。自分たちの奏でる音と蝉と草の音以外に、久々に聞いた音。

「誰?」
「勝手に入っておいて、誰も何もないだろ?先に名乗るのが筋じゃないのか?」

 近くの木の根本にいつの間にか立っていた10代の…後半には達していない少年は、ふん、と機嫌悪そうに言った。

「ああ、ごめんごめん。オレ水谷、コイツ花井、で、栄口。」
 くいくいくいっと親指で指して自己紹介。
「で、君は?」
「オレは泉。ついてこい。案内してやる。」
 くるりと背を向け、歩き出す。
「あ、ちょっと待って。もう一人いるんだ。」
 栄口の言葉に泉という少年がぴたり、と止まる。
「もう一人?」
「阿部…って言うんだけど。」
「ミハシ!タジマは近くにいるか?いない?いいか?絶対に襖を開けるな。いいな!」
 どこかに向けて言うなり走り出す。慌てて三人も後を追う。
 何が起きているのか、何を起こしてしまったのか分からないまま。