ほぼ同時刻


「ふぅ………」
 泉や田島などが持っているバーチャル・ネット・ゴーグルとはあまりにも形が違うものを頭からはずしたのは三橋である。
「ま まさか、もう行っちゃうなんて………」
 三橋は丁寧にケーブルをはずしながらぼやいていた。二人からして、電脳上で自分がわかるか、リアル世界でばれるかは時間の問題となった。

ピピピピ

 その時、内線が入った。相手はモモカン。ふぅ、と深呼吸して電話に出る。

「ありがとう。うちの会社の大事な人材を二人も救えたわ!」
 モモカンの言葉に眉を寄せる。彼女はどこまで知っているのであろうか。
「お オレは何もしてま せん。」
「あらそう?でもありがとう。」
 礼を言われるとなんとなくムズかゆくなる。
 その後、ようやく始まった別の研究について2~3個の質問に答えて受話器を置く。置いた瞬間にびょっと汗が噴き出してくる。流石は性別は女性だけど年齢不詳(というより誰も怖くて聴き出せない。篠岡経由で聴いても「教えられないよぉ」と断られたとか田島が言っていた)の謎の部長は同じ建物の中にいる。
「い 一番の 謎!」

 三橋はぶるっと身を震わせた。



 二人のもとに、差出人がわからないメールが届いているのに気付いていたのは、田島だった。スパムかと思ったが、ありえねぇとクリックした。
中は意味不明な文字列。「あっ」と隣の泉も声をあげた。
「文字列バラバラじゃねえか?」
「そっちにも…?」
「どうサーチさせてもウイルスじゃないな…なんだ?」
 二人でうんうん唸っていると、近くにいた誰かが「二人が怖い」という連絡を受けたのだろう。二人専用クレーム処理係の花井がやってきた。理由を聞いて、ああ、それなら試してみる方法がある。と言いだした。

うっそだー、花井なんでー?
花井のくせにー!

 二人がぎゃんぎゃん言っている間に、USBメモリを持ってきて、ぱぱっといじる。そのソフトは数年前に日本の殆どの者が、そして今でも利用されている圧縮ソフトであった。
「その二つをCドライブに置いてくれ。」
言われるままに置くと、花井はその意味不明な文書を圧縮してしまった。そうしてみると…
「文になってる……」
「昔、この方法でgifとか送ってたんだよ。40メガのHDD時代だな。」
「わ、花井おやじ!」
「おやじ言うな!」
「早く内容確認しなよ……」
 このフロア全体のクレームを処理している栄口が気づいたら花井の背後に立っていて、全員がドン引きした。どうやら缶コーヒーを買いに席を立ったらしい。誰も気づかなかった所が栄口の怖いところであり、恐いところである。
「お、おう。」
「よし、こっちも……できた。」
 見ていた者たちは、文面を見て固まった。
 No nameと思われるメールは、日本語で書かれていたのであった。


ブラウザバック・プリーズ。 2010.05.08訂正