実は、1年9組のクラスのほぼ全員が、とある3人組にこっそりと注目していたりする。

 一人は歩く大騒動 田島。
 一人は歩く毒吐きストッパー 泉
 一人は常時挙動不審 三橋

 彼らはいつも一緒。お弁当食べてる時も、何する時も一緒。こらまた仲のいい3人組である。
 なお、田島と三橋に話がある場合は泉に最初にアポをとっておくというのは基本である。田島は脱線するか大暴走するか。三橋はキョドるか泣くからだ。

 良くも悪くも目立つ3人組。

 その3人組が今日も休み時間に一生懸命頑張っています。

「お、3秒!」
「少し出来たね」
「う…うんっ」

 へんぴな角材の上で三橋が野球のポジションをとろうとする。だが、すぐよろける。それを二人はサポートしているのだ。
教室の一番後ろの窓際。ヘタに転んで右肩を強打したら危険ということで、三橋の前に泉、後方に田島が常に立っている。
 なお、その角材が最初に置かれた時に、ゴミ当番に捨てられそうになったので、田島の字で「1−9 三橋の ゲンミツに!」と書かれてある。教室の隅に置いてある角材。ちょっと他のクラスにはないアイテムである。
 そのアイテムを使うのは、常に挙動不審な人物、三橋。
 最初は物珍しそうに見ていたクラスメイトたちであった。

 最初は片足で立つだけでヒョロヒョロしていた。

 片足で立つことに成功したら、反対の足を少しずつ上げていってはヒョロヒョロしていた。

 ようやく片足のあげかたが安定してきたとホッとしていたら、上半身をまっすぐにしようとしてヒョロヒョロしていた。

 上半身がピシっとなったら投げる寸前の格好になろうとしてヒョロヒョロしていた。

 そして一昨日あたりから、その投げる寸前の格好でヒョロヒョロしていたのが止まりつつあったのだ。


 三橋は無言でバランスをとる。
 田島は絶対に右肩と背中は守るという体勢になっている。
 泉は励ましたりアドバイスしたりしている。

 何かやっているのかは分からない。

 でも気になる。

 でもヘンに話しかけられない。

 ビミョーに視線が交錯する。そう、みんな考えていたのだ。「こう言うのをなんだったっけ?」と。

 だから、見守る。3人を。そしてへこたれない三橋の努力を評価する。いつの間にかクラスメイトたちの視線は休み時間になると三人に向いていた。

「最終目標は1分」
「うんっ」
「もう10秒もできるんだからスゲーよ、三橋」
「…ウヒッ」

 そうか、目標は1分か。

 そうなると気になる。毎時間の休み時間。昼休みは7組や屋上へ行くために3人ともいないがそれ以外の休みは殆どこれにあてられていた。
 1〜2限目 3秒。
 2〜3限目 3秒。
 3〜4限目 3.5秒。

 その日は0.5秒だけ長く立てた。とりあえず、クラスメイトたちはほっとした。

 一週間後には、8.5秒までいった。

 二週間後には、二〇秒までいった。

 そして一ヶ月半…

「…58・59・60!」
「やったぜ三橋!」
「おめでとう!三橋!」
「あ、ありがとうっ、田島君、泉君!」

 うっすら涙浮かべて喜ぶ三橋。

 こっそり、クラスメイトたちは拍手を送っていた。心の中で。拍手を本当にすると、三橋がキョドるということは大体が分かるところまできたのだ。

 その姿にクラスメイトAは気が付いた。そうか、それに酷似していたのだ、と。それはあっというまに広がり、全員が納得した。そうか、そうだったんだよ。と。


 後に凄まじい活躍をする三橋のコメントを求められた時、クラスメイトAはこう答えた。

「まるでつばめの誕生から巣立ちまで見ているようでした。」

 ワインドアップがうまくできるようになった三橋。それを喜ぶ二人。
 しばらくの間、彼らをクラスメイトたちは「3バカツバメ」と呼んでいたことは、とりあえず、ナイショということで。

                                       おしまい。

                                                               阿部の隣で笑っている田島の笑顔が見物です。