情報屋の誕生日


「こ、これを、わたし ます。」
 昔はWindと呼ばれた暗殺者は、今は人を癒す者として新たな人生を送っている。それもまた悪いことではないだろう。ただ、彼はたまーにもう一つ、役割を持つことがある。それが。
「ありがとう。No Nameによろしく伝えておいて。」
「はい。いつ も、ありがとう って。あ…あああと。」
 ニシウラの連中は彼の事を「レン」と言うが、今はとりあえず除虫屋ではない情報屋で、自分も違う名前を名乗っている。おっとここでは教えられないけど。
「ん?なんだい?」
「No Nameから、今日が誕生日だと聞いて。」
 言って、カバンの中からことんと刃物を置いた。独特のきらめき。除虫用のアイテムだ。
「オレ が、つくりまし た。」
 武器士に除虫屋用に作ってもらいました が。と言ってフヒと笑う。昔暗殺をしていた者もこんな笑みが出るようになったのか。と驚くくらいの嬉しそうな顔である。
 刃物を手に取り、軽く扱ってみる。重さ、バランス、さわり心地、全てがトップクラスである。一言で言おう。気にいった。除虫用の刃に関しては緊急除虫作業もある事で、銃刀法違反にならないのがありがたい。秋丸はこっそり武器コレクターでもあるからだ。むろん、除虫屋用の。
「ありがとう。何かお礼をしないといけないくらいだなぁ…こんな武器はここの武器士でも作れないよ。」
 お世辞ではない。決して。嘘はつけない。彼は嘘を見抜くのは下手ではない。上手くもないが。嘘はつけないので詐欺師には決してなれない。無論、ババ抜きも無理だろう。
「そ、そんな……」
「じゃあ、No nameには面白いサイトのアドレスを送るって言っておいて。アドレスはいつもの所って。」
「は はいっ。」
 秋丸の情報は裏の者には垂涎のものである。たまにNo Nameという有名人も使用してくるほどなのだ。そしてNo Nameとつなぎのとれる人物は浜田のみ、と言われているが、実は彼もそうだった。それはそれで、無茶苦茶偶然のことであった。
 ニシウラのネットワークを覗いていたら、普通の回線で、No Nameと普通にチャットしていたのだ。何も包み隠さない場所で。光当たる場所で。
 彼の昔の事は、癒し手特例法の契約を行う時に全て洗いざらい調べたので素生は大体わかっている。だけど、ネットワーク関係は全く知らなかった。まさか、こんな有名人とチャットでしゃべっているとは。
 ついでにハンドルは「れん」。…なんかどこかの居酒屋をもじったような気分になってしまってたそがれてしまった事を覚えている。
 まぁ、No Nameと彼が同時に気づいて、結局三人で会話して、今にいたるのだが。
「三橋くんには……そうだなぁ。」
 ちょっと考えて、ふっと笑う。そうだ。彼にはこれが一番のプレゼントになるだろう。
「叶くん…だったっけ?今こっちに来てるよ?昔の隠れ場にいるから行ってみたら?」
 表情がぱっと明るくなる。なにかわんこに盛大になつかれたような気分だ。
「ありがとうございます!」
 それじゃあ、また。と言って、隠れ家から三橋は出て行った。三橋がこの場所を知っているのはNo Nameが全て教えてくれたからだと言っていた。どこまで凄腕なのかわからないが、自分もなかなかだと思う。
「…ちぇっ…指紋も残してくれなかったか。」
 渡されたUSBメモリには、一切の証拠は残っていなかった。製品出荷時と変わらないフォルムとなって鎮座ましましている。
「まぁ、いいや。こっちはのんびりとやらせてもらいますから。」
 No Nameからもらった情報は、秋丸が一番欲しい情報であった。それを三橋に渡して「誕生日プレゼントです。」ときたもんだ。良くニシウラの者たちが彼の外出を許したものだとそこから心配する。…まぁ、今頃大騒ぎになっているかもしれないが。
 秋丸はふふ、と笑うと、キーボードを叩き始めた。



秋丸が凄腕の情報屋だ…という所からこのクロスオーバーが出来上がりました。はぴば!秋丸くん!下の名前はすぐ忘れちゃうよ!ダメじゃん!